研究課題:


ラドン壊変生成物による放射性エアロゾルの屋内空気中の挙動
 密閉された屋内や地下施設などの人工環境では、大気中のラドン・トロンとその壊変生成物濃度が高くなります。ラドン・トロンは自然に存在する放射性の気体ですが、濃度が高いと肺ガン発症リスクが高まり規制・対策が必要となります。このような空間でのラドン・トロンと壊変生成物の濃度測定法、共同解析と濃度低減技術の開発を行っています。

1.イメージングプレート法による屋内自然放射性エアロゾルの粒径分布測定


 空気中で生成されたラドン・トロンの壊変生成物は空気中に浮遊する微粒子(エアロゾル粒子)に付着して空中を浮遊します。エアロゾル粒子は粒径によって空気中の挙動や肺への沈着効率が異なるため、粒径分布を考慮した濃度測定方法が必要です。高感度2次元放射線検出器であるイメージングプレートを用いた測定方法を放射性エアロゾルの測定に使用しています。
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図1 放射性エアロゾルを大きさ別に捕集するカスケードインパクタ
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図2 簡便な放射線2次元画像検出器「イメージングプレート」(IP)。水色がIPシート。
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図3 IPによるラドン222の壊変生成物からのアルファ線のスポット画像。1つの輝点が多くのスポットの集まり。


2.ラドン壊変生成物のエアロゾル付着成分・非付着成分の屋内空気中挙動の定量解析


 屋内空気中のラドン壊変生成物付着放射性エアロゾルの粒径毎の濃度は、ラドンから生成した壊変生成物の一般(非放射性)エアロゾル粒子への付着、エアロゾル粒子の床・壁等の表面への沈着、換気など、様々な過程により複雑に変動します。これらの過程を定量的に把握することで、放射性エアロゾル粒径分布を決定する要因、住環境での代表的な粒径分布とその出現条件が明らかになり、ラドンによる被曝線量の評価がより精確に行えます。さらに、エアロゾルの挙動の物理の普遍的な解明につながります。

粒径分布
4 屋内空気中のラドン壊変生成物付着エアロゾル粒子の粒径分布測定例。ラドン壊変生成核種は数100ナノメートルの粒子に最も多く付着して屋内空気中を浮遊している。


3.居住空間内ラドン・トロン濃度のサーベイランス


 上記のような測定技術を活用し、一般的な家屋等でのラドンによる被曝状況の調査に協力しています。ラドン・トロン濃度の高い家屋や施設が多い中国や韓国、大地に含まれる天然の放射性物質からの放射線量が非常に高い地域の存在するインドでの実態調査に協力しています。
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図 現地観測の様子(インド)


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